4回シリーズでイライラ対策についてお伝えしている訳ですが、今回はイライラ対策の「常識」が、医学的、脳学的に根本的に間違っていた事をお伝えしたいと思います。
間違っていた事を止めて頂く事は大変大事です。
皆さん、イライラした時に何かを殴ったりすると、スッキリしてイライラが消えると思っていませんか?
実際、私のクリニックにも、「凄くイライラして勉強出来なくなりました」という方がいらっしゃいました。
その方は、普段、イライラ対策で、通販で購入した「殴る専用」の人形を殴っているらしいのです。
殴った瞬間2、3秒はスッキリします。
しかし、「すごく効いている」と思って勉強をはじめたらまたイライラします。
仕方ないからまた通販で買った人形を殴る訳です。
そうなると、「人形殴ってばかりで勉強が全く出来なくなりました」なんていって言って私のクリニックにいらした訳です。
これは彼だけでなく、そういう性質は皆さん持っているはずです。
こうやって、何かを殴ってイライラを解消するという事は、実は日本だけでなく、世界中で常識になっているようです。
実際、海外で脳に対する効果を調べた研究があります。
結果、イライラを治める効果は、殴った瞬間しかない、というデータが出たのです。
また、更に驚く事に、殴る事によってそのほんの数秒は効くのですが、その後イライラした感情はより強まるというデータが出たのです。
つまり、イライラ対策の為に何か殴るという事は絶対にやってはならない事なのです。
殴る事で、イライラはより悪化し、効くのは数秒だけで、少なくとも数分後には余計にイライラしてしまいます。
これが何故かというと、前回ご説明したように、イライラというのは、自分にとって何か良くない事が起こったという事で、それを改善する為にイライラします。
原始的には、暴力によってイライラを改善させようという事です。
例えば、自分の食べ物を誰かに奪われた場合、殴って奪い返すという行動を行わせる為に、イライラした感情をまず作り、それで殴るという行動をとると一瞬すっきりするという事になります。
数秒間、確かにスッキリするというのはそうゆう事なのです。
でも、これはもともと自分にとっての問題を解決させる為の脳の仕組みです。
例えば、受験生の場合、「このままだったら数学の点数が悪い点になりそうだ。」
これが問題点ですよね。
これが解決出来る方策を実際に自分で実践すると怒りは消え、イライラも消えます。
しかし、人形を殴ったところでその問題点は何も解決していません。
効かないのは当たり前。
それどころか、殴るという行動で、脳の中で攻撃のモードに入るのです。
敵と戦う、攻撃している時なのだと脳が認識すると、脳全体で、ノルアドレナリンという攻撃の為のホルモンが出るのです。
このホルモンによって余計にイライラさせられます。
肉体的に戦っている時は、ノルアドレナリンなんかを使ってイライラしている時の方が、がむしゃらになって攻撃出来るので戦いに勝てるのです。
しかし、受験勉強中、ノルアドレナリンで怒りモードになっている状態では、点数が上がるどころか、大幅にダウンしてしまうという事が起こるのです。
実際に、脳への磁気刺激でこのイライラを抑える時は、この攻撃の時の脳の状態と正反対の状態にします。
これにより、イライラも収まるし、理性的、論理的思考力で問題を解くという能力も上がるのですが、何か殴るという事はその逆をやっているという事です。
だから、こうゆうやり方を受験生は絶対に止めるべきなのです!
では、効果的にイライラをどう抑えたら良いのか?
もちろん一番効果的なのは磁気刺激ですが、ご家庭でもできる方法もありますので、次回とその次、2回にわたってご紹介したいと思います。